今度こそさようなら、ドラえもん・零式の巻 其の拾四

 老婆が粥の支度に取りかかった頃に、老爺はようやく目を覚ました。そして、

老爺「・・・おいババア! 風呂! 風呂沸かさなくていいのか!」

 この老夫婦にとって、「風呂を沸かす」とは屯所への通報を意味する隠語である。囲炉裏端でドラえもん・零式と出くわした老爺は、すっかり恐慌に陥っていた。

老婆「今日は風呂は要らないよ! すっ込んでな!」
老爺「またあいつがいるでねえか!」
老婆「いいって言ったら、いいんだよ! 邪魔だから喋んな!」
老爺「何だと!」

 このままでは口論に発展してしまうと判断したドラえもん・零式は、再び金をチラつかせて、この場の鎮静を図った。

ドラえもん・零式「せっかくだから、お風呂も沸かしてもらおうかな。お金ならあるし」
老爺「おおっ・・・! 金でねえか・・・!」
老婆「・・・ジジイ! 早く風呂沸かしてこい! 今回は本当に沸かしてこい!」
ドラえもん・零式「茜ちゃん、君も入っていくだろう?」
茜「ちょっと、ドラえもん・零式さん!」

 一刻も早くこの家から立ち去りたいと考えている茜は、慌ててドラえもん・零式を止めにかかった。しかし、

ドラえもん・零式「いいじゃないか。何たって」
茜「・・・・・・」
ドラえもん・零式「お金ならたっぷりあるんだし」

 まさに子役時代の内山信二がそこにいた。何しろ口癖が「金ならあるし」になっているのだ。そもそもその金は慶次の金であり、茜が旅費として預かっているものなのだが、ドラえもん・零式はすっかり自分の金であると勘違いしてしまっていた。

ドラえもん・零式「・・・いやぁ、狭かったけど、いい湯だったなぁ」

 風呂から上がったドラえもん・零式が上機嫌で廊下を歩いていたところ、茜に向けられた老婆の罵声が聞こえてきたため、ドラえもん・零式は慌てて囲炉裏端へ戻ることとなった。

老婆「・・・だから、アンタはスケベだって言ってんだよ!」
茜「・・・・・・」
老婆「恰好、顔つき、声、喋り方、醸し出す雰囲気・・・いや、存在そのものが、男を誘惑している! ああ、はしたない! ああ、いやらしい!」
茜「・・・・・・」
老婆「生まれついてのバイタだね! 親の顔が見てみたいよ!」

 何故、今日会ったばかりの赤の他人からここまで言われなければならないのかわからないが、茜は言い返す気にもなれなかった。言い返したところで、火に油を注ぐことにしかならないからだ。

老爺「・・・・・・」

 老爺は止めに入ろうともせず、ただひたすら茜の太ももを凝視していた。この老爺も人格的にどこかおかしいのだろう。老爺の視線が心底不愉快だった茜だったが、もはやどうにもならなかった。

ドラえもん・零式「・・・もうそのへんで勘弁してやってよ」
老婆「あら、お帰りなさいまし。お湯加減はいかがでしたか?」
ドラえもん・零式「ちょうど良かったよ。ところでお酒はあるかい?」
老婆「お酒は別料金になりますが・・・」
ドラえもん・零式「全然構わないよ。お金ならあるし」
老婆「熱燗にいたしますか? それとも常温で? 肴は何にいたしますか?」
ドラえもん・零式「うーん、そうさなぁ・・・」
茜「ドラえもん・零式さん、本当に、もう・・・」

 まだ長居をしようとするドラえもん・零式に対し、茜が口を挟もうとしたところで、再び老婆の逆鱗に触れることとなった。

老婆「その縋るような声、仕草! 上目遣い! ああ、いやらしい! ああ、はしたない!」
茜「・・・・・・」
ドラえもん・零式「君もお風呂に入ってきたまえよ。ちょうど良い湯加減だったよ」
茜「・・・私は結構です」
老婆「このお方が入れと仰っているんだから、さっさと言うとおりにしないか!」
茜「いえ、本当に・・・」
老婆「ああもう、本当にイライラする子だね! 入れって言ったら入るんだよ!」
ドラえもん・零式「遠慮することないって。入ってきなよ、ほら」

 こうして、二人に押し切られる形で入りたくもない風呂に入ることになった茜だったが、

茜「・・・ぎゃあーっ!」

 間もなく後悔することになった。老爺が風呂を覗きに来たからであった。全てを見られた茜は転げるように風呂場から飛び出して行ったという。

ドラえもん・零式「・・・お婆ちゃん、お粥、おいしかったよ。ありがとう」
老婆「いえいえ、大したおもてなしもできませんで」
ドラえもん・零式「また来るよ。今度は慶次君も誘って」
老婆「そのときは、是非お二人とも大罪人になってお越し下さいまし」
ドラえもん・零式「冗談きついなぁ、ハッハッハ。じゃあね、長生きするんだよ」

 ドラえもん・零式にとっては名残惜しい判れとなったが、茜にとっては、まさに解放であった。玄関先で手を振り続けている老婆に対し、茜は背を向けたままであった。

ドラえもん・零式「・・・茜ちゃん、どうしてそんなに不機嫌なんだい?」
茜「・・・・・・」
ドラえもん・零式「ねえ、何か喋ってよ」
茜「・・・・・・」
ドラえもん・零式「君がお風呂に行っている間、お婆ちゃんから色々聞いたんだよ」
茜「・・・興味ありません」
ドラえもん・零式「いいから、聞いてくれたまえ」

 茜の言うとおり、この老夫婦もまた逃亡犯罪人を家の中に誘い込み、屯所に通報することで賞金を得て生活の足しにしていた。ただし、賞金が出るのはあくまで屯所兵が捕縛に成功した場合であって、取り逃がした場合はビタ一文も出ないという。そのため、ドラえもん・零式が逃走した際は地団駄を踏んで悔しがったという。

ドラえもん・零式「どうして僕が、逃亡犯罪人だとわかったんだい?」

 ・・・と問うと、

老婆「確証があったわけじゃないんだよ。とりあえず誘い込むのさ」

 と老婆は答えた。そして、日が落ちた後に、こっそりうちの残飯を漁るような奴は大体が逃亡犯罪人なんだ、と続けた。逃亡犯罪人は人目を避ける。当然、宿場町や城下町には入らない。集落から離れたこの家は、まさに逃亡犯罪人にとってのオアシスであるらしい。

老婆「大罪人なら、一年は遊んで暮らせるほどの賞金が出る」

 ドラえもん・零式が「僕は武田家家老、斜メ前田慶次の使用人なんだ」と打ち明けたとき、老婆は身震いするほど感情が昂ぶり、誤魔化すのに必死だったという。貧困に苦しむ老夫婦にとって、ドラえもん・零式は転がり込んで来た千載一遇のチャンスだった。

老婆「お尋ね者の情報は、旅人から金で買っている」

 この投資は、決して無駄にならないという。そして、たまにただの乞食が家の中に入り込むこともあるが、そのときは屯所兵に叩き出してもらっているそうだ。屯所兵は通報を受けた際に、犯罪人の人相書きを持って現場へ向かう。間違えることは滅多にない。

老婆「もしアンタがあのとき、初めから打ち明けてくれていたら・・・」

 屯所にもその旨を通報したし、屯所としても人を増やして絶対に取り逃がさなかっただろう。今頃は大金で遊び暮らしているはずだったのに、結局一文にもならなかった。ツイてなかったと老婆は嘆いた。

ドラえもん・零式「恨みを買うから、そろそろこんなことはやめた方がいいよ」

 とのドラえもん・零式の忠告に、老婆は聞く耳を持とうとしなかった。その昔、屯所兵だった一人息子が誰何した逃亡犯罪人に刺殺されたからだという。息子の敵討ちと供養も兼ねていると主張する老婆に対し、ドラえもん・零式は一言も反論できなかった。

ドラえもん・零式「どうして、茜ちゃんに対してキツいんだい?」

 との問いには、「大人しくて従順そうな感じが何か気に入らない」「男に媚びてそう」「寒いのに太ももを露出させているのは、男を誘っている証拠だ」などとヒステリックにまくし立てたため、そのうちドラえもん・零式は考えるのをやめた。

茜「・・・・・・」
ドラえもん・零式「ねえ、さっきから黙ってばっかりじゃないか。何か喋ってったら。ねえ。ねえってば」

 茜の不機嫌はしばらく収まる気配がなく、ドラえもん・零式は脂汗をかきながら静かに後を尾いていったという。ちなみに、この後ドラえもん・零式と老夫婦が再会することはなかった。ドラえもん・零式の忠告を無視した老夫婦は数年後、家の中で惨殺体となって発見された。何者かの恨みによる犯行と思われるが、真相は定かではない。

 ・・・さて、次回こそはいい加減、慶次とドラを再会させようと思っています。さすがに長すぎると思うので。それでは今日はこのへんで ノシ
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Date: 2016.02.12
Category: 信on休止中
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