秘め事、の巻 後編

 ・・・その後、慶次は突入を思い留まり、一人静かに家路についた。

斜メ前田慶次「あの時は、どんなに怒鳴り散らしてやろうかと思ったが・・・」

 後に慶次が語るところによると、怒りよりも哀れさのほうが上回り、突入を断念したという。しかし、遊女に正体を晒してしまっているドラえもん・零式をこのまま放っておいて良いものか? 慶次は迷った。迷いに迷った。

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ドラえもん・零式「やあ、ただいま! いやあ、遅くなってしまって申し訳ない。ハッハッハ」

 ・・・と、ここへ欲望を満たしきったドラえもん・零式が意気揚々と帰宅してきたことに、慶次は思わず「うむむ」と唸らされることとなった。

ドラえもん・零式「どうしたんだい、妙な声を出して」
斜メ前田慶次「いや、別に。ずいぶん遅かったな。どこへ行っていたんだ?」
ドラえもん・零式「いや、別に。どこだっていいじゃないか。それより提案がある」
斜メ前田慶次「何だ、提案ってのは」
ドラえもん・零式「一つ、賭けをしないか?」
斜メ前田慶次「賭け、だと?」
ドラえもん・零式「そうだ。もし僕が勝ったら、二ヶ月間小遣いなしを取りやめてもらう。つまり、従前の状態に戻すということさ」

 ・・・こいつ、どんだけ千早の膝枕にハマッてんだよと、慶次は思った。

斜メ前田慶次「なるほど。もし俺が勝ったら?」
ドラえもん・零式「え? 何もないよ」
斜メ前田慶次「ふざけんな。そんな賭けがあってたまるか。俺に何の得も無えじゃねえか」
ドラえもん・零式「頼むよ! そこを何とか」
斜メ前田慶次「やれやれ、お前は甘い。甘すぎる。世の中をナメきっているとしか思えねえな」
ドラえもん・零式「虫が良すぎるお願いだってことは、わかってる! でもそこをどうにか・・・どうにか・・・!」
斜メ前田慶次「じゃあこうしようじゃねえか。勝負の方法はお前が決めていい。その代わり・・・」
ドラえもん・零式「その代わり・・・!?」
斜メ前田慶次「もしお前が負けたら、さらにもう一月分、小遣いを没収する。つまり三ヶ月間小遣いなしとする」
ドラえもん・零式「そんな殺生な!」
斜メ前田慶次「ただし、三ヶ月先の小遣いの前借りは認めてやってもいい。いいが・・・」
ドラえもん・零式「ま・・・まさか・・・まさか・・・!」
斜メ前田慶次「何しろ、三ヶ月先の小遣いの前借りだ・・・! 当然、正規の額を渡すわけにはいかねえ。半分ですら無理だ」
ドラえもん・零式「半分から、さらに削ると言うのか! いい加減にしろ! どんだけあこぎなんだ!」
斜メ前田慶次「お前に渡すことのできる額は・・・正規の額の四割だ・・・!」
ドラえもん・零式「四割とか! どんだけ強欲なんだ! ありえない! ありえないぞ!」

2015043001.jpg

斜メ前田慶次「そういうことで、皆の衆には納得してもらっている・・・! 悪いな、ドラ・・・!」
ドラえもん・零式「ぐっ・・・! 大槻班長を・・・さらに超えてくるとは・・・!」
斜メ前田慶次「嫌なら別に受けなくたっていいんだぜ。俺としては全然構わねえ」
ドラえもん・零式「うぐっ・・・! ぐっ・・・!」
斜メ前田慶次「けどよ。さっきも言ったとおり、勝負の方法はお前が決めていいんだ。だったらこれは千載一遇のチャンスと考えていいんじゃねえか?」

 確かにそうだ。勝負の方法をもし自分が有利な方法で決められるなら、こんなチャンスはない。ないが・・・

ドラえもん・零式「ほ、本当に僕が決めていいんだね・・・!?」
斜メ前田慶次「そうだ。さっさと決めろ。モタモタしてたらこの勝負はなかったことにするぞ」

 どんな勝負にするか、が重要になってくる。万が一にも自分が慶次に負けることのない勝負とは、一体何か。

斜メ前田慶次「早く決めろって」
ドラえもん・零式「焦らすなよ」
斜メ前田慶次「チッチッチッチッチッチッチ・・・・」
ドラえもん・零式「だからやめろって」

 体力勝負や、格闘では負ける可能性がある。サイコロ勝負やクジ引きなどの運否天賦も避けたい。となれば・・・!

ドラえもん・零式「決めた!」
斜メ前田慶次「おう、何だ?」
ドラえもん・零式「針の穴糸通し対決だ! どうだ!?」
斜メ前田慶次「何だ、そりゃ。一体どんな勝負なんだよ」
ドラえもん・零式「簡単さ。互いに一本の糸を持ち、それをこれまた互いに一本ずつ持った針の穴に先に通したほうが勝ち。シンプルで良いだろう?」
斜メ前田慶次「確かにシンプルだが・・・何か地味だな。本当にそれでいいのか?」
ドラえもん・零式「いいさ。さあ、どうする? 受けるかね?」

 ドラえもん・零式には、実は勝算があった。普段から繕いものをしていることもあってか、針の穴に素早く糸を通すことには自信がある。それに加え、使い慣れた針とクセのよくわかっている糸を使用しての勝負である。しかし慶次とて、

斜メ前田慶次「俺ぁ、組み立て式の窯や、絶品のラーメンを作ることのできる男だ。手先は決して不器用じゃねえ。むしろお前がそれでいいのか?」
ドラえもん・零式「いいって言っているだろう。何だい、ビビッちゃったのかい?」
斜メ前田慶次「馬鹿を言うな。お前がいいなら、それでいい」
ドラえもん・零式「じゃあ、この方法で確定だね。待っていてくれたまえ。今、裁縫箱から針と糸を取ってくる」
斜メ前田慶次「最後に確認だが」
ドラえもん・零式「何だい、早くやろうよ」
斜メ前田慶次「あくまで、針の穴に糸を先に通したほうが勝ち・・・ということでいいんだな」
ドラえもん・零式「だから、それでいいって」
斜メ前田慶次「構わないんだな・・・!? それで・・・!?」
ドラえもん・零式「しつこいな! いいんだよ、それで! すぐ戻るから待っていたまえ!」

 ・・・ドラえもん・零式が満を持して提案した『針の穴糸通し対決』だったが、これが何と、波乱の幕開けとなった。

ドラえもん・零式「・・・ぶえっ!」

 突如、左頬に走った強烈な衝撃と痛みに、ドラえもん・零式は恐慌をきたすこととなった。開始と同時に慶次が渾身のビンタを彼の左頬に叩き込んだのである。「バシンッ!」という乾いた音が室内に響いた。

ドラえもん・零式「・・・なっ・・・!? なっ・・・!」

 ドラえもん・零式は、一体何が起こったのかわからなかった。今、やっているのは『針の穴糸通し対決』のはずだ・・・! なのに何故・・・! 何故ビンタが・・・!? 一体、何故・・・!?

斜メ前田慶次「・・・ドラアッ!」

 息もつかせず、ドラえもん・零式の懐に入り込んだ慶次の次の手は、何とも豪快な一本背負いであった。

ドラえもん・零式「・・・!? ・・・!?」

 空中を浮遊している間でも、やはりわからなかった。何故!? 何故、僕は今、宙を舞っているんだ? 今やっているのって、確か『針の穴糸通し対決』のはずだろう・・・! 何故・・・!? 一体、何故なんだ・・・!?

ドラえもん・零式「・・・ごぶぁっ!!」

 受け身も取らず、背中から庭に落下するドラえもん・零式。あまりの衝撃に呼吸ができなくなってしまった。もはや、針の穴に糸を通すどころではない。

斜メ前田慶次「・・・っしゃあっ! 通った! 針の穴に糸が通った! 俺の勝ちだ! 残念だったな、ドラ! ハッハッハッハ!」

 無様に身体をピクピクと震わせているところへの、慶次の勝利宣言である。ドラえもん・零式はもはや起き上がる気力すら失ってしまった。

斜メ前田慶次「残念だったな、ドラ。もしお前が・・・」

 ”相手の妨害をしてはいけない”と一言、付け加えておけばこんなことにはならなかった。そこがお前の甘さだ。その甘さを捨てない限り・・・危機感を持たない限り・・・俺はお前に過酷な処遇を科す。科し続ける。お前がタイムパトロール蝶野に逮捕されないためには、それしかない。お前の目を覚ますためには、それしかないのだ・・・。

ドラえもん・零式「・・・うっ・・・ううっ・・・うっ・・・!」

 庭に大の字になり、忍び泣きを続けるドラえもん・零式を尻目に、慶次は外出の支度を始めた。


 ・・・この後、慶次がどこへ出かけたのかは知る由もありませんが(傾城町へ遊びに行ったのかも?)、戦国の世では何と、東西戦が開幕したようです。

2015061001.jpg

 先ほど、ちょっとだけログインして見に行ってみたのですが、今年もトンカチはあるようですね。そして、前田慶次が西軍の後副将となっている以上、私は東軍の一員として参加し続けることになりそうです。今年もアレをやりたいなとは思っているのですが、何しろゲームできる時間が・・・。もしやれる時は時間・サーバーなど、ここで告知するつもりです。それでは今日の記事はこの辺で。
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Date: 2015.06.10
Category: 信on休止中
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