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いくさ場の花の巻

 ・・・昔々、甲斐国のあるところに一人の暴君がおったそうな。

「・・・つまらぬ。落とせ」
「そんな殺生な! ・・あっ」

 何でも月に一度、領内の村人たちを城に呼びつけては一発芸をすることを強要し、その芸が気に入らなければからくり仕掛けの地下牢へ落とすという残忍極まりない行為を行っているそうである。

喜兵衛「か、か、桂川村の喜兵衛と申します」
大山田信茂「ふむ」

 その暴君の名は大山田信茂といった。

喜兵衛「ほ、本日はその、えー」
大山田信茂「緊張しているようだが、早よう見せい。儂は気が短いのだ」
喜兵衛「か、かしこまりました」

 喜兵衛の一世一代の一発芸がようやく始まった。

喜兵衛「三本の矢って話、ありますよね。あの、毛利家の有名な」
大山田信茂「ふむ」
喜兵衛「良い話ですよねー。ええ、確かに三人が力を合わせれば毛利家は安泰でございましょう。しかし」
大山田信茂「しかし?」
喜兵衛「私は三本の矢を飲み込むことができます。今からご覧に入れましょう」
大山田信茂「ほほう! 矢を飲むと申すか! それも三本も!」
喜兵衛「では! いきます!」

 懐から取り出した三本の矢を、必死の形相で口中に押し込む喜兵衛。

喜兵衛「・・・ふっ、ふぐっ! ぶぐっ!」
大山田信茂「これこれ・・・本当に飲み込めるのだろうな?」
喜兵衛「・・・んぐおおおおおーっ!」
大山田信茂「おおっ! 三本の矢がどんどん中へ・・・!」

 殿様に認めてもらえなければ、地下牢へ落とされてしまう。喜兵衛の苦しさはこの時点ですでに最高潮に達していたが、絶対に途中でやめるわけにはいかなかった。

喜兵衛「・・・んぐっ・・・ぐっ・・・んがっぐっぐ・・・ごくん」
大山田信茂「うおおっ! こ、こやつ飲みよった! 本当に三本の矢を、飲み下しよった!」
喜兵衛「・・・はあっ・・・はあっ・・・こ、このようにいくら三人が力を合わせたとて・・・!」
大山田信茂「ふむ」
喜兵衛「巨大な存在には・・・勝てぬということです・・・! 世の中はそんなに甘くない・・・!」
大山田信茂「ふむう・・・」
喜兵衛「毛利家はおそらく・・・いずれ巨大な何かに飲み込まれることになりましょう。以上、私の一発芸はこれにて終了です」
大山田信茂「大した芸であった。想像を絶しておったわ。しかし残念ながら地下牢へ落ちてもらう」
喜兵衛「・・・そ、そんな! ここまでやったのに!」
大山田信茂「落とせ」
喜兵衛「・・・あっ!」

 小姓が天井からぶら下がっている綱を引いた瞬間に床が抜け、哀れにも喜兵衛は地下牢へと飲み込まれていったのであった。

大山田信茂「・・・何かキモかったわー。矢を飲むとかないわー。もっと笑える芸を見てみたいものじゃ。さあ、次! 次の者、早よう!」

 このような無茶なことを続けていれば、いずれはお上の耳にも入ることになる。甲斐国主である武田信玄はこの事実を知って激怒した。

武田信玄「斜メ前田!」
斜メ前田慶次「・・・はっ」
武田信玄「手勢百名を付ける。大山田を詰問して参れ!」
斜メ前田慶次「マジッすか」
武田信玄「さっさと行かぬか!」

 たまたま近くにいたという理由で、慶次は大山田を詰問する役目を負ってしまったのであった。

斜メ前田慶次「面倒くせえな。大山田の城って確か相模国に近いんだろう。遠くて嫌なんだよなあ」
曲江兼続「主命ですから、仕方ありませぬ」
斜メ前田慶次「詰問って言っても、たぶん反省なんざしねえぞ。そういった類の馬鹿殿は」

 甲府から半日ほどをかけ、慶次一行がようやく大山田領に足を踏み入れたところで、異変が起こった。

曲江兼続「・・・敵襲!」

 森の中に潜んでいた大山田軍の銃口が突如、火を噴いたのである。幸いにも死者は出なかったが、数名が負傷する事態となった。

斜メ前田慶次「・・・おのれ、ふざけた真似を! 全員俺に続け! 大山田の首を取る!」

 怒りに我を忘れ、一心不乱に大山田城へと馬を駆った慶次であったが、いざ城へ着いてみて愕然とした。規模としては小さい城ではあるのだが、背後には山が控え、周囲には堀をめぐらし、銃眼がそこかしこに設置されていた。まさに守るに易し、攻めるに難しといったところで、慶次一行は手をこまねく他なかった。

曲江兼続「こ、これは・・・!」
斜メ前田慶次「おそらく中には三百名ほどが立て籠もっているだろう。百名程度で寄せたところでどうしようもない」
曲江兼続「援軍が来なければ、どうしようもありませんね」
斜メ前田慶次「うむ。早速使いを走らせよう。おい、誰か」

 慶次が従者に声を掛けたところで、慶次の想像を絶する事態が起こった。

曲江兼続「・・・えっ!? 慶次どの、一騎駆けをなさるおつもりですか!」
斜メ前田慶次「何!? おいおい、いきなり何を言いだすんだ」
曲江兼続「さすがは慶次どの! やはり一騎駆けこそ、いくさ場の花ですよね! 『花の慶次』の前田慶次も言ってました!」
斜メ前田慶次「俺はやるなんて、一言も言ってねえぞ! というかさっきお主、援軍が来なければどうしようもないって言ってたじゃねえか!」
曲江兼続「皆の者、よく聞け! 慶次どのが一騎駆けをして、突破口を開いて下さるそうだ!」

 感嘆のため息、どよめきが百名全員から起こった。そしてその中で一人、慶次だけがひたすらテンパッていた。

斜メ前田慶次「黙れ! やんねえぞ! 俺は! 死にに行くようなもんだ! 俺は前田慶次じゃねえんだよ!」
曲江兼続「慶次どのの~、ちょっといいとこ見てみたい! さあみんな一緒に! ほれ一騎! 一騎! 一騎!」
斜メ前田慶次「お主! 俺に何の恨みがある! もうクビだ! クビ! 甲府に帰ったらクビにしてやるからな!」

 否が応にも一騎駆けをする雰囲気に持っていったこの日の兼続を、慶次は生涯根に持ったそうだが・・・とにかく慶次は一騎駆けをしなければならなくなってしまった。

曲江兼続「さあ、ここまで来たら行くしかありません。大丈夫です。少し後に我らも続きますから」
斜メ前田慶次「一生恨んでやるからな」
曲江兼続「ああもう、見苦しい! あなたはそれでも前田慶次のバッタモノですか! そんなんじゃいつまで経っても前田慶次に勝てませんよ!」
斜メ前田慶次「一生恨んでやるからな」
曲江兼続「さあ、さあ! 早く行ってくださいってば!」

 やむを得ず慶次が馬に鞭を入れようとした瞬間・・・またしても予想外の出来事が起こった。何と武田軍が清州攻めを始めたという知らせが早馬によって届いたのである。

斜メ前田慶次「大山田のことは捨て置き、急ぎ清州へ参陣せよ、か・・・こりゃあ仕方ねえなあ。はっはっは」
曲江兼続「くっ・・・!」
斜メ前田慶次「俺の一騎駆けを皆に見せてやりたかったが、残念だ。急いで甲府に戻り、いくさ支度を始めねばならん」
曲江兼続「・・・・・・」
斜メ前田慶次「主命だから仕方ねえよな。いやあ、残念、残念。さあ皆の者! 甲府に戻るぞ!」

 その後、再び半日ほどをかけて甲府へ戻った慶次一行であったが、清州への合戦参加は遅れに遅れてしまったという。

 ・・・さて、ここ最近はほとんどログインすることもできなくなってしまったわけですが、今週の合戦にはどうにか時間を見つけて参加したいと思っています。

2014082101.jpg

 あくまで、前田慶次を倒すことがこのブログの目的です。チャンスがあれば飛びつかなければなりません。時間的に難しいかもしれませんが、何とかやってみたいと思います。それでは今日の日記はこの辺で。
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Date: 2014.08.21
Category: 信on
Comments (2)Trackbacks (0)

この記事へのコメント:

鏡花の核弾頭

Date2014.08.22 (金) 08:11:58

暑い日が続きますが、いつもの斜メ節。楽しく読ませてもらうとともに、お元気そうで安心しました。

さて今回の記事ですが、きたる清洲合戦において慶次さんが一騎駆けをする前フリと思っていいんてすよね?w
ただ駆けてもらっても目立たないので「ゲリラ一騎」をリクエストします。
※ゲリラ一騎とはゲリラの起点として人を集めておきながらカウントダウンせずに敵陣に突っ込む行為

蛮頭「恐るべき一騎駆けですな」

斜メ慶次「一騎駆けこそ戦場の華ではないのかね?」

く~痺れますな!是非とも傾いて散ってくだされ!

斜メ前田慶次

Date2014.08.25 (月) 18:16:44

斜メ前田慶次の中の人です。
コメントありがとうございます!

今回は慶次が一騎駆けを強要されるお話でした。
『花の慶次』の前田慶次と比べると、やはり器の小ささは明らかですね(笑)

ゲリラ一騎で味方の突破口を開く・・・
いずれやってみたいと思います!
まさにいくさ場の花ですね。

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