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今度こそさようなら、ドラえもん・零式の巻 其の拾壱

ドラえもん・零式「酒を酌み交わしてやってもいいかなって思ってる」

 ドラえもん・零式が好敵手と書いて”とも”と呼んだその男は・・・秋葉捨忍は・・・すでに帰らぬ人になっていることに、彼は気が付いていない。そしてまさかその死体が、自身の足元の雪の中に埋もれていることにも、当然ながら気が付いていない。

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茜「また会えるといいですね」
ドラえもん・零式「ははは。まあ、ちょっと照れ臭いけどね」

 間違いなく、再会は果たしている。ただ、相手が生きているか死んでいるかの違いだけだ。

ドラえもん・零式「今頃、どこで何をしているんだろうなあ。頑張ってるといいけどなあ」
茜「ドラえもん・零式さんも頑張らないといけませんね」
ドラえもん・零式「そうだ! 僕も忍者になりたい! なれるかな、忍者!?」
茜「今から、ですか? いや、ちょっとそれは・・・」
ドラえもん・零式「僕も四人くらいだったら楽々倒せるようになりたいんだよ」
茜「忍びの修業は、子供の頃から始めないと厳しいですよ」
ドラえもん・零式「そこを何とか、ご指南いただきたいんだよ。頼むよ」
茜「それに、何も忍者でなくても・・・」
ドラえもん・零式「ほら、例えばさ」
茜「はい?」
ドラえもん・零式「君なんか、エロ漫画だったら絶対に男たちに滅茶苦茶にされるタイプだろ? そんな君でもあんなに強くなれるんだ。僕はもう忍者の道しか考えられない。ねえ、頼むよ。頼むったら」

 ”えろまんが”が何のことだかよくわからないが、間違いなくろくなことを言われていないんだろうなと、茜は感じた。

 それから二刻(約四時間)ほど街道を南下したところで、またもドラえもん・零式がふと足を止めた。

茜「どうしました?」

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ドラえもん・零式「・・・そう、だよね・・・そりゃ、そうだ・・・着くよな・・・元来た道を引き返しているんだから・・・」
茜「この家が、どうかしたのですか?」
ドラえもん・零式「茜ちゃん」
茜「はい?」
ドラえもん・零式「・・・君は、ガチで人から裏切られたことがあるかい?」

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 ・・・ある日の夜。ドラえもん・零式は両肩を抱きながら、一歩一歩雪の中を進んでいた。

ドラえもん・零式「・・・くうぅぅぅっ・・・ふうぅぅぅっ・・・あぁっ・・・」

 風がないことが救いだったが、氷点下まで下がった気温の中、半袖で歩くことを余儀なくされているドラえもん・零式の両腕はすでに真っ赤になっていた。指先に至ってはとうの昔に感覚がなくなっていた。早く・・・早く・・・どこかの家の床下に入らなければ死んでしまう。このとき、ドラえもん・零式はそう感じていた。

ドラえもん・零式「ぐうあぁあっ!・・・・ふっふうぅぅうっ!」

 たまに風が吹くと、たまらず悲鳴を上げてしまった。歩くことでわずかながら温まった身体の熱を一瞬にして持っていかれてしまうからだ。寒くて震えが止まらない。震えで歯が噛み合わない。辛い。もう辛い。どこか家は・・・家はないのか・・・! もう、ずいぶん歩いているというのに・・・!

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ドラえもん・零式「・・・う・・・うううっ!・・・うっ・・・うっ・・・!」

 人気の全くない雪原を、月明りのみを頼りに半袖で歩き続ける心細さと辛さは、平成の世に生きる我々の想像を絶しているといえよう。それに加え、

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2016012805.jpg

 たまに響いてくる化け物どもの咆哮が、心細さをよりいっそう強めた。涙が止まらない。会いたい。慶次君に会いたい。夢でもいいから会いたい。会いたいよ、慶次君・・・!

ドラえもん・零式「・・・ハアッ・・・ハアッ・・・おっ・・・おっ!?」

2016012801.jpg

ドラえもん・零式「・・・家だ! 家だァッ!」

 雪原の中にぽつんと現れたその一軒家は、紛れもなく家であった。どこかの集落に属している様子は見られない。何かワケアリなのかもしれないが、今は詮索している余裕などない。まずは腹ごしらえだ。ドラえもん・零式は慣れた手つきで残飯を漁り始めた。

茜「いきなり残飯ですか・・・」
ドラえもん・零式「とにかく腹が減っていてね」
茜「助けは求めなかったのですか?」
ドラえもん・零式「助けを求めても無駄だからね」

 ここまでに、助けを求めて助けてくれた家は一軒たりとて無かったと、ドラえもん・零式は語った。断られるか居留守を使われるかのどちらかで、結果はやる前から見えているし、精神的にも傷つくからいつしか助けを求めるのをやめたらしい。

ドラえもん・零式「いいぞ・・・この家の残飯・・・バランスが取れている・・・!」

 まるで『孤独のグルメ』の主人公のようなセリフを吐きながら、残飯を貪るドラえもん・零式に、声を掛ける者があった。この家に住む老婆であった。

老婆「おやまあ、そんなものを食べて・・・さぞお困りでしょう。どうぞ、中へお入り下さいまし」

続く
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Date: 2016.01.28
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今度こそさようなら、ドラえもん・零式の巻 其の拾

 四人の野盗を返り討ちにした茜とドラえもん・零式は、しばしの間沈黙しながら、甲斐を目指して街道を南下した。

ドラえもん・零式「・・・・・・」

 茜を守るはずが、逆に守られてしまったことにプライドが相当傷ついてしまったのだろう。どうしても会話をする気分になれなかった。人間の姿に変身してさえいなければ、四次元ポケットが使えたのに・・・あんな奴ら、敵じゃなかったのに・・・ドラえもん・零式は自身の運の無さを呪った。そしてそんな惨めな猫型ロボットの気持ちを察してか、

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茜「・・・・・・」

 茜も沈黙を守っていたが、ドラえもん・零式がふと足を止めたことで互いの沈黙は突如破られることとなった。

茜「・・・どうしました?」
ドラえもん・零式「懐かしいな、ここ・・・」
茜「この場所に、何かあるのですか?」
ドラえもん・零式「ここで僕は好敵手(とも)と出会ったのさ・・・」
茜「とも? ご友人ですか?」
ドラえもん・零式「はっはっは。違うよ。そんなんじゃない」
茜「では、ともとは一体?」
ドラえもん・零式「何ていうんだろうね・・・友達とは違うし、初めは敵だったけど今は敵ではないと僕は信じている」

 わけがわからないな、と茜は思ったが、ひとまずドラえもん・零式の話に耳を傾けることにした。

ドラえもん・零式「あの日は・・・そう、星空がとにかく綺麗だったことが印象に残っているよ」

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秋葉捨忍「金を出せ」

 震えながら死ぬ思いで歩いていたところ、この場所で追剥ぎに遭ったとドラえもん・零式は語った。もう何日前のことだったかまでは覚えていないが、場所だけははっきりと覚えているという。

ドラえもん・零式「・・・お金なんか無いよ! 見ればわかるだろう!」
秋葉捨忍「ごちゃごちゃ言わずに金を出せってんだよ」
ドラえもん・零式「半袖なんだぞ、僕は! こんな僕からまだ何か奪おうと言うのか!」
秋葉捨忍「黙れ! さっさと出さねえと殺すぞ!」
ドラえもん・零式「逆だ。お前が金を出せ。命が惜しければ金を出せ!」
秋葉捨忍「なっ、なっ、何だと!?」

 まさかの”逆追剥ぎ”に、秋葉捨忍は我が耳を疑った。しかしどうやら目の前の半袖の男は本気のようだ。

ドラえもん・零式「さあ・・・出せ・・・金を・・・!」
秋葉捨忍「テメエ! 自分の立場わかってんのか!?」
ドラえもん・零式「お前がな」
秋葉捨忍「・・・下がれ! 下がれこの野郎!」

 その後二人は激しい口論の末にもみ合いとなった。雪の中で必死の攻防が続いた。

ドラえもん・零式「金が欲しけりゃ働けよ! 真面目に働けよ!」
秋葉捨忍「うるせえ! テメエに言われる筋合いじゃねえ!」
ドラえもん・零式「この駄目人間が! 親が泣いてるぞ!」
秋葉捨忍「テメエに何がわかるってんだ!」
ドラえもん・零式「追剥ぎをするような・・・」
秋葉捨忍「あ!?」
ドラえもん・零式「追剥ぎをするような・・・クズの気持ちなんかわかりたくもないね!」
秋葉捨忍「こっ、この野郎! 抜かしやがったな! ぶっ殺してやる!」
ドラえもん・零式「やってみろォッ! やってみろォーーーーーーッ!」

 約二十分間ほど寝技と関節技の応酬となったが、一瞬の隙を突いて背後に回り込んだドラえもん・零式に軍配が上がった。慶次のお株を奪うチョーク・スリーパーを秋葉捨忍に極めたのだった。

秋葉捨忍「・・・ゲッ・・・ゲッ・・・!」
ドラえもん・零式「勝負は付いた! タップしろ!」
秋葉捨忍「・・・ッ・・・!」
ドラえもん・零式「どうした、タップしろ! しないとこのまま落とすぞ! いいのか!?」

 タップと言われても何のことだか理解できない。命の危険を感じた秋葉捨忍は両手でドラえもん・零式の腕を掴みながら懸命にもがいたが、完全に極まっているチョークを外すのはどんな達人でも不可能である。喉が圧迫される痛みと呼吸ができない苦しさに耐えながら、秋葉捨忍はもがき続けた。目を見開きながらもがき続けた。

秋葉捨忍「・・・・・・!」

 目の前に広がる一面の星空を、秋葉捨忍は一体どんな気分で眺めたのだろうか。チョークを極められてさえいなければ美しく映るに違いないのだが、この状況では果たしてどう見えるのだろうか。気になる。気になって今夜も眠れそうにない。

茜「・・・その後、どうなったのですか?」
ドラえもん・零式「僕の勝ちさ。落としたのさ」
茜「本当にお金を奪ったのですか?」
ドラえもん・零式「奪った」
茜「奪ったんかい」
ドラえもん・零式「とはいっても、一文しか持ってなかったよ、彼。一文じゃ蕎麦も食べれやしない」
茜「その人もきっとお金に困っていたのですね・・・」
ドラえもん・零式「だから、服を奪うのだけはやめておいた。あの寒空じゃ絶対凍死しちゃうからね」
茜「そこは偉いですね。ドラえもん・零式さんも半袖だったんでしょう」
ドラえもん・零式「彼にも親が・・・家族がいるはずだからね・・・」
茜「もしまた会えたら、彼に何て声を掛けますか?」
ドラえもん・零式「それは・・・会ってみないとわからないよ。けど今なら」
茜「今なら?」
ドラえもん・零式「酒を酌み交わしてやってもいいかなって思ってる」

 ・・・秋葉捨忍はその後、意識を取り戻すことなく凍死したという。

続く
Date: 2016.01.27
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今度こそさようなら、ドラえもん・零式の巻 其の九

”諸事万端片付いた。お前を追う者はもういない。安心して帰ってこい 慶次”

 慶次からのこの帰還命令に、ドラえもん・零式は当初乗り気ではなかった。

ドラえもん・零式「今さら、慶次君に会わす顔なんかないよ・・・」
茜「きっと斜メ前田様は、ドラえもん・零式さんに会いたがっていますよ」
ドラえもん・零式「そんなことあるもんか。慶次君は僕のことが嫌いなんだよ」
茜「そんなことありませんよ。さあ、早く旅の支度をして下さい」

 ようやく一人暮らしに戻れる好機が訪れたのだ。何としてでもドラえもん・零式を旅立たせる必要がある。茜は顔を合わすたび、ドラえもん・零式を説得し続けた。そしてようやくドラえもん・零式が重い腰を上げたのは、帰還命令が届いてから三日後のことであった。

茜「私もお供しますので。お金も斜メ前田様からたくさんいただいてますし、道中困ることはありません」

 茜のこの一言から、ドラえもん・零式の態度は徐々に軟化していった。そして金を湯水のように使い、豪遊しながらの旅であればという条件で、甲府の慶次宅へ戻ることを受け入れたのであった。


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茜「なるべく贅沢させないように、とは書いてあるけど・・・」

 慶次からの信書にはそう書かれてあった。甘やかすときりがないし、贅沢の味を思い出したらまた厄介なことをしでかすかもしれないからだ。しかしそれではドラえもん・零式が納得しようとはしないだろう。茜はやむを得ず、慶次からのこの要請を無視することにした。

ドラえもん・零式「茜ちゃんとまた一緒に旅することができて嬉しいよ」
茜「あのときは、私はただ尾行していただけですけどね」
ドラえもん・零式「信濃は危険が多いけど、僕が守るから安心したまえ」
茜「私は大丈夫です」
ドラえもん・零式「君は女の子じゃないか。僕の後ろにしっかり付いてきたまえ。いいね」
茜「私は大丈夫なんですけどね・・・」

 その後も、「何かあったら僕を置いてすぐに逃げたまえ」「君のことは僕が守る」「僕はいざとなったらやる男なんだ」などと言っては、茜を困らせるドラえもん・零式であった。そして越信国境に二人がたどり着いたとき、ドラえもん・零式の態度に変化があった。

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ドラえもん・零式「殺してやる・・・!」
茜「ちょっと、落ち着いて下さい!」
ドラえもん・零式「僕はこいつらのせいで死ぬところだったんだ! 絶対に許せない!」
茜「関所兵には私から言っときますから! 物騒なことはやめて、行きましょう!」

 どんなに助けを求めても、無情に国境線の向こうへ投げ飛ばされた。蹴り飛ばされた。殴り飛ばされた。このときドラえもん・零式の全身が怒りで震えていた。茜はドラえもん・零式をなだめるのに相当骨を折ることとなったが、

茜「旅籠に着いたら、豪勢な料理とお酒を注文しましょう」

 この一言で、ドラえもん・零式の機嫌を直すことにようやく成功したのであった。

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ドラえもん・零式「あいつらのことも、絶対に許さないから」
茜「もうわかりましたから・・・ほら、行きましょう」
ドラえもん・零式「慶次君に頼んで、クビにしてもらおうっと」
茜「・・・・・・」

 振り返り振り返り、関所兵にガンを飛ばすドラえもん・零式を茜が必死になだめながら一里ほど歩いたところで、予期せぬ事態が起こった。突如林から飛び出してきた四人の荒くれ者たちに囲まれてしまったのだ。

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荒くれ者「命が惜しけりゃ、金を置いていけ」
ドラえもん・零式「・・・ゲエーッ! 野盗!」
荒くれ者「おっ!? 上玉じゃねえか。その女も置いていけや。ヘッヘッヘ・・・」
ドラえもん・零式「茜ちゃん、逃げるんだ! ここは僕が喰い止める!」

 相手が一人なら、何とかなるかもしれない。しかしこの人数では・・・! どうしてこんなときに限って慶次君はそばにいないんだ。いつも、いて欲しいときに限っていないじゃないか! ドラえもん・零式は心の底から慶次を呪った。そして絶望した。

茜「・・・・・・」
ドラえもん・零式「どうしたんだ!? 逃げなきゃ駄目だ! さあ、早く!」
荒くれ者「ゴチャゴチャ言ってねえで、早く金を出さねえか!」
ドラえもん・零式「金が欲しけりゃ、人並みに働けよ!」
荒くれ者「何だとこの野郎!」

 ・・・それがこの荒くれ者の最期の言葉となった。

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茜「ドラえもん・零式さん、下がって!」
ドラえもん・零式「え!?」
茜「邪魔です!」

 ドラえもん・零式が慌ててしゃがみ込んだ瞬間、茜の放ったくないが荒くれ者の喉笛を正確に貫いていた。

荒くれ者「・・・ゲッ・・・」

 そして荒くれ者がのけ反りながら地面に倒れたころには、残る三人の荒くれ者たちもすでにこの世の人ではなくなっていた。背面跳びで瞬時に三人の背後に回り込んだ茜が、彼らに抵抗する間も与えず、次々に斬り殺していったのであった。

茜「・・・済みました。行きましょう」
ドラえもん・零式「あ・・・茜ちゃん・・・君・・・」
茜「はい?」
ドラえもん・零式「結構・・・強いんだね・・・びっくりしたよ」
茜「こう見えても忍びですので」
ドラえもん・零式「それにしても、何も殺すことはなかったんじゃない? 命だけは助けてあげても良かったような」
茜「どうしてですか? このような輩、生かしておいても人に迷惑しかかけませんよ」
ドラえもん・零式「・・・そ、そりゃあ、そうだけど、ね」

 茜の意外な一面に驚きと困惑を隠せないドラえもん・零式であったが、同時に恥ずかしさで死にたくなった。僕は守る側じゃない。守られている側なのだと。いても立ってもいられず、雪の中に飛び込んだところ、岩が隠れていたため額をパックリと割る怪我を負ってしまった。どれだけ間抜けなのだろうか。

茜「・・・大丈夫ですか!? しっかりして下さい!」

 その後の道中、ドラえもん・零式は一声も発することなく、ただただうなだれていたという。

続く
Date: 2016.01.19
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今度こそさようなら、ドラえもん・零式の巻 其の八

 信濃での逃亡生活がドラえもん・零式に与えたダメージは、心身共に深刻なものであった。

ドラえもん・零式「・・・ハアッ・・・ハアッ・・・う、う~ん・・・」

 極寒と吹雪に加え、劣悪な栄養状態、不衛生な環境での寝泊まりにより、全身に凍傷やしもやけが認められたが、その他にも打撲痕、切り傷、擦り傷、引っ掻き傷などを至る所に見つけることができた。おそらく、追手や野生動物から逃れる際に負ったものであろう。

 それに加え、感染症にも罹患していた。茜宅に運び込まれた日から高熱が治まる気配が一向に見られず、一時は意識レベルがかなり低い状態となり、茜が医者から親族への連絡を促されることもあった。しかし、戦国の世にドラえもん・零式の親族などは当然ながら存在しないため、

斜メ前田慶次「・・・あいつ今、茜の家にいんのか!?」

 甲府の慶次宛てに信書を送るほかなかった。慶次は慌てて春日山の茜宅に送金の手筈を取ることとなった。本来ならば金と土産を持って慶次本人が茜宅を訪れ、迷惑をかけていることを詫びるのが筋なのだが、このときの慶次には甲府を離れられない事情があったため、


2013111803.jpg

茜「・・・・・・」

 やむを得ず、金と信書を送るだけにとどまった。何故か大人のおもちゃまで同封されていたが、一体どのような了見でこのような物まで送ってきたのかは、慶次本人に訊ねてみなければわからない。茜がため息をつきながら大人のおもちゃをゴミ箱に放り込んだところで、ドラえもん・零式の容体に変化があった。

ドラえもん・零式「うっ・・・うわああああ! ああああーーーっ!」
茜「ドラえもん・零式さん!?」
ドラえもん・零式「・・・助けてくれぇっ! 助けてくれぇーーーっ!」
茜「ドラえもん・零式さん! 落ち着いて下さい! ここは私の家です! 大丈夫ですから!」
ドラえもん・零式「・・・ひどい! ひどいよ! どうして裏切るんだよ、お婆ちゃん! どうして!」

 逃亡生活で、どれほどの恐怖と絶望感を味わったのだろうか。ドラえもん・零式は無意識のうちに叫びだすことが多々あった。もっとも暴れたりはせず、ひとしきり叫んだ後はまた布団の上で意識を失うのだが、これでは看病をする茜もさぞかし大変だったであろう。そしてドラえもん・零式が茜宅に運び込まれてから二週間ほどが経過した頃、

ドラえもん・零式「すまないねえ・・・茜ちゃん・・・」
茜「いえ、お気になさらず」

 布団の上で、自力で粥を食べられるほどまで、ドラえもん・零式の体力は回復していた。しかし気力まではまだ回復していなかったようで、

ドラえもん・零式「僕にはもう、行くところがないんだよ・・・」
茜「大丈夫です。きっと、斜メ前田様が上手く取り計らってくれます」
ドラえもん・零式「慶次君なんかに期待したって、無駄だよ・・・」
茜「そんなことないですって」
ドラえもん・零式「ああ・・・僕は今後どうしたらいいんだろう・・・」
茜「春日山にしばらく滞在するのでしたら、仕事と家を紹介しますよ」
ドラえもん・零式「僕は怖い・・・怖いんだよ。人が怖いんだ。働くなんて、とても・・・」
茜「大丈夫です。越後でドラえもん・零式さんを追う者はいませんので」
ドラえもん・零式「いつ裏切られるかわからない怖さを抱えて働くなんて、僕には・・・」
茜「大丈夫です。きっと大丈夫です」

 信濃で誰から裏切られたのかはわからないが、とにかく、このまま居座られては困る。茜は日々、ドラえもん・零式を励まし続けた。しかし茜の想いはなかなかドラえもん・零式に届こうとはしなかった。体力が回復し、茜の家の家事を手伝うようにはなったのだが、就職活動や家探しをする気配が一向に見られない。茜は泣きたくなった。定期的に慶次から送金されてはくるものの、今、問題にしているのは金ではない。ドラえもん・零式が居候を続ける限り、一人の時間を持つことはできないし、恋をすることもできないのだ。

ドラえもん・零式「しかし、君たちくのいちも大変だね。こんなに寒いのに太もも丸出しで」
茜「えっ? ええ。でも、動きやすいので」
ドラえもん・零式「僕なんかはもう、厚着をしないと不安で不安で外に出られないよ」
茜「半袖で過ごしていたんですよね。その根性があれば、職に就いても絶対に上手くいきますよ」
ドラえもん・零式「話は変わるけど、君の好きな巻き寿司を作ってみたよ。ほら、見てみたまえ」
茜「あら、ありがとうございます。お料理上手なんですね。住み込みでどこかの料亭で働いてみてはいかがですか? もしよければ紹介しますよ」
ドラえもん・零式「どう?」
茜「はい?」
ドラえもん・零式「太くて、長いだろう? こういうのが、好きなんだろう?」
茜「・・・・・・」

 どう? じゃねーよ。茜は心の中で毒づいた。何とドラえもん・零式、ここ最近はまるで慶次のような言動まで出てきてしまっていた。長く生活を共にしたせいか、ものの見方や考え方がうつってしまっているのだろう。もっとも慶次とは異なり、決して意図してのことではないのだが、それでも茜にとってはたまらなかった。

茜「ああ・・・私は今後どうしたらいいんだろう・・・」

 こうしてドラえもん・零式の弱気が茜にうつりかけた頃、それまでの生活を一変させる信書が慶次から届いた。

”諸事万端片付いた。お前を追う者はもういない。安心して帰ってこい 慶次”

続く
Date: 2016.01.15
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今度こそさようなら、ドラえもん・零式の巻 其の七

茜「・・・あなたは!?」

2013111803.jpg

 久々の登場となった茜に、もし存在を気付かれていなければ、このときドラえもん・零式は間違いなくこの世の人・・・もとい、この世のロボットではなくなっていただろう。しかし、

ドラえもん・零式「・・・フ・・・フヒヒ・・・い・・・イイ・・・!」

 当のドラえもん・零式が茜の存在に気付いていなかった。何と放置される喜びに目覚めてしまっていたのだ。これでよく自身が「子どもたちのアイドル」などと言えたものだ。全く真逆ではないか。死を前にして意識が定かではなかったことを差っ引いてもひどい。ひどすぎる。

茜「・・・ドラえもん・零式さんですよね!? どうしてこんな姿に? ・・・うっ! クッサ!」 

 助け起こそうとしたところで、ドラえもん・零式の全身から漂う臭いにむせる茜。逃走を開始してからというもの、ドラえもん・零式は一度も風呂に入ることができなかった。何しろ金がなかったため、旅籠に泊まることができなかったのだ。

ドラえもん・零式「・・・お願いします! お願いしますぅーーーー!」

 ある吹雪の夜のことであった。極寒と飢えに耐えられなくなったドラえもん・零式は、とある民家に助けを求めた。ところが、

家主「・・・うちには、分けられるものなどございません・・・布団もありません・・・どうか・・・どうかご容赦を」

 戦国の世を襲った異常気象により、一年中が冬となってしまった信濃の民たちの生活は、我々の想像より遥かに悲惨であった。何しろ農作物を作ることができない。収入を得る手段といえば、出稼ぎか内職、観光産業くらいであった。そのような状況で、他人に施すことは無理であったと言えるだろう。

ドラえもん・零式「・・・半袖なんですよ!? 僕! こんなに寒いのに半袖なんです!」

 甲斐から着の身着のままで出てきてしまったドラえもん・零式、何と気温が氷点下であるにも関わらず・・・吹雪いているにも関わらず・・・日夜半袖での行動を余儀なくされていた。しかし家主にとってそんなことは知ったことではない。

家主「どうか・・・どうかご容赦を・・・」
ドラえもん・零式「せめて! せめて家の中に入れて下さいぃ~~~・・・何も望みませんからぁ~~~」
家主「どうか・・・どうかご容赦を・・・」
ドラえもん・零式「死んじゃうよぉ~~~! お願いだからぁ~~~!」
家主「どうか・・・どうかご容赦を・・・」
ドラえもん・零式「・・・君! さっきからそれしか言わないじゃないか! 容赦できるならとっくにしてるよ!」
家主「・・・・・・」
ドラえもん・零式「わかったよ・・・! もういい・・・! その代わり・・・」
家主「・・・・・・」
ドラえもん・零式「・・・残飯・・・漁りますから・・・! それくらいはいいですよね・・・?」
家主「・・・・・・」
ドラえもん・零式「うおお! 漁る! 僕は残飯を漁るぞ!」

 粗末な食事ではあったが、わずかながらの残飯はこの家も出していた。しかし・・・外に出していたとしたら、当然こうなる。

ドラえもん・零式「凍ってる・・・! 凍ってるよ・・・残飯・・・ううっ・・・うううっ・・・!」

 この残飯シャーベットのくだりは何故か慶次のツボにハマッたらしく、ことあるごとにこの話を出して爆笑しては、ドラえもん・零式を怒り狂わせたという。

 その後ドラえもん・零式は、昼は残飯漁り、夜は民家の床下で拾った筵に包まって眠るという日々を送りながら、死ぬ思いで越後春日山を目指した。何故春日山だったのか。慶次と過ごした日々が最も長かった街だったからだろうか。それは本人に訊ねてみなければわからない。

 そしてとうとう、越信国境にたどり着いたときにはすでに、体力も精神力も限界に達していた。捕まる危険を冒しながらも、ドラえもん・零式は抜け道を使おうとしなかった。すでに山道を登る体力が残っていなかったのだ。風貌が変わり果てていることは本人も自覚していた。武田家の関所兵からスルーされることに賭けたのだ。

 しかし、ちょうど国境線で倒れてしまったことで、やる気のない両家の関所兵から厄介払いをされてしまうことになってしまった。投げ飛ばされ、蹴り飛ばされ、殴り飛ばされながら、ドラえもん・零式は国境を八往復することになってしまった。このことについては少しだけ同情したいと思う。

茜「・・・動けますか? 今、助けを呼んできますから! ・・・うっ! クッサ! オッ・・・オッ・・・オエッ・・・!」 

 こうして、茜が嘔吐するほどの異臭を放っていたドラえもん・零式はすんでのところで春日山に運ばれることとなり、その後しばらくの間、春日山の茜宅で養生することとなった。

続く
Date: 2016.01.07
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プロフィール
信長の野望online真紅武田家で活動中 &相互リンク・無断リンク募集中です。

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