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今度こそさようなら、ドラえもん・零式の巻 其の伍

ドラえもん・零式「・・・タイムパトロール蝶野を振り切った、僕の脚をナメるなよ!」
警護「待てい!」

 自身に伸ばされた警護の右手をすんでのところでかわし、正門へ向けて疾走を開始するドラえもん・零式であったが・・・

ドラえもん・零式「・・・しまった! 囲まれた!」

 警護たちとて素人ではない。逃走を防ぐための訓練ならば常日頃から積んでいる。瞬く間に退路を断たれたドラえもん・零式が身柄を拘束されるのにそう時間は掛からなかった。

警護「大人しくせんか!」
ドラえもん・零式「・・・放せ! 放せェ~ッ!」
警護「・・・倒せ、倒せ! 倒したら押さえよ! こやつ蹴ってくるぞ! そこには立つな、横に回れ!」
ドラえもん・零式「人権侵害だ! おかしい! こんなのおかしいぞ! 僕は民事訴訟の原告なんだ、僕が死刑だなんておかしい!」
警護「ええい、早く押さえよ! 早く! ・・・痛ッ! こやつ引っ掻きよった!」
ドラえもん・零式「僕は無罪! 僕は無罪だ! 武田家所属のプレイヤーの皆さん、シュプレヒコールを! どうかお願いします! シュプレヒコールの波をーッ!!」



『世情 腐ったミカンの方程式』

 散々もがき、喚き散らしたドラえもん・零式だったが、とうとう複数人の警護により地面に組み敷かれてしまった。平成の世の常識で考えればあり得ないことなのだが、ここはあくまで戦国の世。そういった世情なのだから仕方がないのだ。

小岡越前守忠相「・・・引っ立てい! 刑はただちに執行する!」

 今まさにドラえもん・零式が縄を打たれんとしたその時・・・その場にいた全員にとって想像を絶する事態が起こった。

「・・・きゃあ~っ!」

 傍聴人の一人である町娘が心底怯えた悲鳴を上げたその刹那、

警護「・・・ぐあっ!」

 警護の身体が反りかえり、やがて泡を吹いて倒れたのであった。そしてその異変は小岡の身にも及んでいた。

小岡越前守忠相「こ、これは・・・!? か、身体が・・・痺れて・・・! 一体、何が?」 
斜メ前田慶次「・・・ハアッ・・・ハアッ・・・!」
小岡越前守忠相「・・・な、斜メ前田様!? 斜メ前田様!」 

 突如起こった怪奇現象によって慶次が負傷したと覚った小岡は、慌てて武田家家老・斜メ前田慶次を守る命令を下した。

小岡越前守忠相「皆の者、ご家老の身を守れ!」
斜メ前田慶次「・・・そ・・・その必要は・・・ねえ・・・ハアッ・・・ハアッ・・・!」
小岡越前守忠相「・・・し、しかし!」
斜メ前田慶次「・・・邪魔ぁ・・・すんなってんだ・・・! 俺ぁ・・・ただ・・・!」
小岡越前守忠相「・・・!?」
斜メ前田慶次「・・・無性に・・・ムラムラしちまっただけなんだからよ・・・!」
町娘「・・・嫌ぁ~っ!」

 甲府南町奉行・小岡は目を疑った。自身が守ろうとした男が、こともあろうに白洲で下半身を露出し、自家発電を始めていたのだ。乱れた息遣いの原因はまさにこれであった。負傷などではなかったのだ。

町娘「・・・誰か! 誰か! このおじさん、変なんです!」
斜メ前田慶次「こ~んなになっちゃったよ~」
町娘「・・・ちょっ!」

 間近で慶次の自家発電を見せつけられているにも関わらず、この娘が感電の被害に遭わないのは何故か。たまたま金属を一切身に帯びていなかったこともあるが、体質やその日の体調にもよるらしい。ともかく町娘は電気によるショックは受けなかった。受けたとすれば、精神的なショックだろうか。

小岡越前守忠相「・・・うぐぁっ!」

 帯刀している小岡以下奉行所の面々は皆、感電により意識を失っていった。強制的に地面にうつ伏せにされていたドラえもん・零式についてはどうかというと、町娘と同じく感電の被害を免れていた。逃げるとするなら、この機会しかない。

ドラえもん・零式「・・・慶次君・・・!」
斜メ前田慶次「見てんじゃねえよ」

 茫然と立ち尽くすドラえもん・零式に、慶次はただ目だけで促した。「行け」と言っているのだ。



『あまちゃん 希求』

ドラえもん・零式「・・・慶次君・・・ひょっとして君は僕を・・・逃が・・・!?」
斜メ前田慶次「・・・馬鹿野郎! 感電してえのか! ハアッ・・・ハアッ・・・!」
ドラえもん・零式「いや・・・」
斜メ前田慶次「お、俺はただ・・・お前が組み伏せられている姿に・・・興奮しただけだ! ハアッ・・・ハアッ・・・!」
ドラえもん・零式「どんな趣味だよ」
斜メ前田慶次「俺はまだ手を止めねえ・・・! モタモタしてると、感電するぞ、馬鹿野郎!」
ドラえもん・零式「・・・そんなに、馬鹿野郎、馬鹿野郎って言わないでくれよ・・・」
斜メ前田慶次「馬鹿だから馬鹿だって言ってんだ! ボサッと立ってんじゃねえ! 馬鹿野郎!」
ドラえもん・零式「・・・慶次君・・・」
斜メ前田慶次「うっ・・・やべっ・・・イキそ・・・!」

 慶次が白目を剥いた瞬間、弾かれたようにドラえもん・零式は駆け出した。自家発電が終わり皆の意識が戻れば、奉行所から逃走することは不可能になってしまうからだ。このまま無事に他国へ逃れることができれば、もう二度と慶次と会うことはないだろう。謝罪と感謝の言葉を伝えられなかったことを、ドラえもん・零式は激しく悔やんだ。両眼から溢れ出る涙を手で拭うことも忘れ、ドラえもん・零式は走った。ひたすらに走った。

斜メ前田慶次「・・・行ったか・・・それでいい・・・! じゃあ俺も・・・そろそろイクぞ・・・ドラ・・・達者でな・・・!」

 突如起こった数度の縦揺れに足を取られかけたが、ドラえもん・零式はなおも走り続けた。

続く
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Date: 2015.09.14
Category: 信on休止中
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今度こそさようなら、ドラえもん・零式の巻 其の四

2015082401.jpg

両替商「この者の死刑執行を速やかに執り行うことを望みます」

 ・・・実際はドラえもん・零式から金を受け取った両替商だったが、どうにかドラえもん・零式の口を封じることに成功したようであった。

 しかし、当然ながらドラえもん・零式が納得するはずがない。涙目になりながら喚きに喚いた。

2013051102.jpg

ドラえもん・零式「・・・よくも、よくもそんな! よくも!」
両替商「私が申し上げたいことは以上です」
ドラえもん・零式「汚い! 汚いぞ! こんなことは許されない!」
小岡越前守忠相「・・・ええい、黙れい! 黙らっしゃい!」
ドラえもん・零式「これが黙らずにいられますか! 武田家所属の皆さーん! 甲府の両替商は汚いですよ! 人を平気でハメますよ! 何も預けないほうがいいですよ!」
小岡越前守忠相「黙れと言っておろうが!」

 ・・・ここでドラえもん・零式は言わなくてもいいことまで言ってしまい、事態をさらに悪化させることとなった。

ドラえもん・零式「・・・小岡君、君も受け取ったな!? そうに違いない!」
小岡越前守忠相「受け取った? 何をだ?」
ドラえもん・零式「両替商から金を! 金を受け取ったんだろう! だからこんな不公正な裁きが出来るんだ!」
小岡越前守忠相「・・・・・・」

2015082401.jpg

両替商「・・・やれやれ、お話になりませんな」
ドラえもん・零式「君は黙ってろ! このドグサレがァーッ!」
斜メ前田慶次「・・・ドラ、お前な・・・」
ドラえもん・零式「慶次君、君からも言ってやってくれよ! この二人、汚いんだよ!」

 自分が訴えた相手である慶次に助け船を求めるドラえもん・零式。もはや敵が誰なのか判らなくなっているようであった。

小岡越前守忠相「・・・家老殺害、二度にわたる詐欺に加え」
ドラえもん・零式「え?」
小岡越前守忠相「さらに白洲を侮辱したる罪についても刑に加えねばならなくなった。よって」
ドラえもん・零式「・・・ちょ、ちょっと待って下さい。それは・・・」
小岡越前守忠相「市中引き廻しの上、磔獄門をもって相当とする」
ドラえもん・零式「・・・市中引き廻し・・・磔・・・獄門・・・!?」
小岡越前守忠相「これにて一件落着とする。速やかに引っ立てい」

2015091001.jpg

警護「・・・ははぁっ!」
ドラえもん・零式「・・・うぐ・・・ぐ・・・!」
警護「立てい」

 ・・・言われるがまま、ドラえもん・零式は立った。立ったがそれは、

2013051102.jpg

ドラえもん・零式「今日はこれくらいで勘弁してやる!」
警護「・・・貴様!? 止まれ! 止まらんか!」

 逃走を図るためであった。タイムパトロールから追われ、奉行所からも追われ・・・どうやらこの猫型ロボットは常に何かから追われ続ける宿命にあるようであった。

続く
Date: 2015.09.10
Category: 信on休止中
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